Story 03

東欧の老朽プラントを稼働させよ
石油化学プラント設備海外輸出の現場

2019年7月19日 取材

深い信頼関係が生み出す、ビジネスの継続と拡大・発展

石油化学プラント向けの設備を、国内・海外の大手石油化学会社などへ販売。インドの大手財閥系の石油化学会社とは、2003年から今に至るまで取引が長く継続している。今ではそのビジネスが、2015年に丸紅テクノシステムに入社した飯島悠史に任せられている。

このインドの会社とはPTA(ポリエステル繊維・PET樹脂・PETフィルムなどの主原料)を作る設備を納入したのが取引の始まり。インド経済の発展とともに、工場の拡張に合わせ、様々な機械を提案していく中で、企業同士のつきあいはより深く、そして広範に拡大していった。
飯島は、代々先輩が築いた信頼関係を引き継ぎ、良好な関係を更に強化して、ビジネスを拡大し続けている。

飯島は「お客様も代替わりしていますが、長年築き上げた信頼関係が地盤となり、今でも強固な関係を維持していると思います」と胸を張る。

化学・素材設備事業部 化学リサイクルチーム 飯島

インドの企業は、どの企業も要求が強いのが特徴だ。時には無茶では!?という要求もある。
「先方からはまず120%の要求を言われるのが普通です。これはもはやインドの文化とすら言えるので、基本的にはNoと言い、こちらが対応可能な範囲を伝えるところからコミュニケーションが始まります。例えば、『明日までに見積もりが欲しい』と言われるケースはよくありますが、大抵の場合本当に見積もりが必要な日程はもっと先です。仮にこちらが期限を守っても、顧客側がこちらの要求期限を守らないことも良くあります。コミュニケーションを慎重に行っても、頻繁にこのような状態になるので、毎回インド側の要求をそのまま協業している日本の会社に伝えて、急かしてしまうと、狼少年のように信用を失います。本当に必要なタイミングで協力してもらえない状態に陥ってしまうと、時間が命のビジネスでは致命的です。インドでは普通のことが、日本では普通ではない、そのような文化背景の違いを考慮してビジネスを進める必要があります。相手の話をただ聞くだけでなく、相手の立場を考え、真の要望を聞き出すようなコミュニケーション能力は日々鍛えられています」

人口が増え、国力だけでなく経済力も高まっているインド。大手財閥系が運営する石油化学プラントからは、最初のラインの納入以来、増設の度に引合いがあり続けるという。

「何事も積み重ね。常に顧客の要望を満たす機械を選定・納入し、その後のメンテナンス対応も顧客が満足するまで対応してきたからこその信頼関係だと思っています。石化分野は、数多の製品の原料を生み出しているため、深い信頼関係を築ければ、国の経済成長、会社の発展と拡大に合わせてビジネスチャンスが拡大していきます。1つ1つ積み重ねた信頼関係から始まるビジネスが1つの会社からその地区へ、そして街から国へ拡大できる、非常にやりがいのある仕事だと考えています」

「今後インドの経済発展に伴い、社会に必要なものの質、量は爆発的に増え、多様化していきます。そのため、彼らの欲しているものや、欲するであろうものをタイムリーかつ適切に把握し、満足させるべく提案し続けることが、商社として今より更に重要になると考えています」と飯島は語る。

そしてこれまでつきあいのない取引先や斬新な技術を探し出し、それらをインドへ導入して、お客様の喜ぶ顔を見ること。これこそが、丸紅テクノシステムで働く醍醐味の1つだと、飯島は感じている。

東欧の老朽プラントを稼働させよ
石油化学プラントの維持に商社の力を発揮

東欧・スロバキアでは、老朽化した石油化学プラントに更新設備を提供するという、非常にハードルの高い業務を完遂した事を契機に、取引先との間でより深い信頼関係を築いた。
過去に大型機器を納入した実績のあるスロバキアの大手石油会社からある日、“老朽化した部品を交換したいのだが、どこに声をかけていいのか分からない”という問合せが丸紅テクノシステムへ入った。

このスロバキアの会社では、1970年代に日本のエンジニアリング会社が手がけた石油化学プラントを今も所有・オペレーションしている。40年近くも経ったプラントでは、稼動するポンプやバルブそして細かな部品も含めて、大部分の設備や機器類を交換する必要性が生じていた。
部品の種類、メーカーの数は非常に多く、スロバキアから各日本メーカーに対し、1から商売のルートを作るのは膨大な手間がかかる。そこで丸紅テクノシステムが一括して、日本の設備や機器の手配をすることとなった。

星の数ほどの設備や機器がある石油プラントの交換プロジェクト、ある時期にはコールセンターのようにスロバキアから連日、機器や部品の問い合わせやリクエストを受けた。これに対して飯島は、これまで取引の無かったメーカーも含めて代替設備・機器や部品を探しだし、廃盤や“メーカー自体がなくなった”などの困難に直面しながらも、最適な代替品を含む日本製機器の更新設備や機器、そして部品を手配した。結果、スロバキアの石油化学プラントの無事な稼動の実現に貢献することができた。

こうして築いた信頼関係により、この会社からは、老朽化している別のエチレンプラントの熱交換器も丸紅テクノシステムに手配して欲しいと声がかかり、飯島にとっての新しいビジネスに繋がった。

「石油化学プラントに使われる設備機器は星の数ほどあります。
今回窓口となり、一括して日本製設備機器の手配をしたことで“日本製で分からないものがあればとりあえず丸紅テクノシステムに相談してみよう”という意識が、顧客の中に浸透したと思います。
非常に大変で困難の連続でしたが、顧客に感謝され、商社マン冥利に尽きるな、と感じました。また、新しいメーカーと商売を始めた結果、今まで知らなかった製品、分野の知識を吸収できたため、今後他案件に対する提案が楽しみです」

商社マン飯島の挑戦の日々は、これからも続く。